2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

あの日

春になる前に思い出すことがある。 外の均等な光とたくさんの層に分かれた空気が混ざり合ったり反射したりして、気持ち良さそうだから薄着で外に出てみる。息を吸い込むときにざざざと鳥肌が立つような昼間、体の芯は冷たくてまだまだ心から笑えない。そうい…

割れちゃった真っ白と、ジュース

ベッドの下の、絨毯とベッドの隙間の奥底には数匹のキノコがいて、夜になるとにょきにょき顔を出してくる。それが本当に怖い。闇の中で赤緑の光が無数に点滅したらどうしよう。こっちを見ている。だからベッドから手や足をはみ出さないように寝なくてならな…

13歳くらいの少女

映画ではよく、13歳くらいの少女が、いい年をした大人に対してアドバイスをするというものがあってそれは大抵の場合、というか完全に的を得ているのでものすごくびっくりする。ある映画では恋愛に悩む兄に対して、「魚(女)は海(世界)に死ぬほど泳いでる…

色をつける

朝が来る。誰にでも朝はやってくる。 私はいつからか朝が来る事を、当たり前のこととして受け止められなくなってしまった。それはいつからなのだろう。朝ふと目覚める時のことなんて全く覚えてない。光が差し込まない部屋にいるからだろうか。何度もぼやけた…

こんにちは御月様(ダイジェスト版)

それで私はドアを開けた。 両腕を回すと空気と振動してぶんぶん音がするから、いつもよりもたくさん回した。このまま肩の関節が外れても仕方ないと思ったが、全然外れなかった。体がなんだかじれったくて、どうしたらいいか分からない。靴をはききれないまま…

外部に一部分を委託した散文

今もまだまだブチブチと切れている。まだまだ足りない。 「 」ってよく使われる言葉で、いろんな人が意識をする。いろいろな場面でよく耳にする。でも「 」それ自体の構造が、実はよくわからないでいる。あたかも有機的にそうなっているように人々が思うのは…

寸止めについての考察(増補版)

幾分、抽象的な話になってしまうのだが、デジャブという現象があったとして、その脳内映像、あるいは既視感、そういったものに捕らわれる瞬間が私には少なからずある。それは決まって、視線を一点に集中させるばかりか、足が停まってしまうようなやっかいな…

共鳴せえへんか

僕と共鳴せえへんか。 織田作之助の「夫婦善哉」、どうしょうもないけど惹かれてしまう柳吉のくらくらする口説き文句だ。私はこの小説を読んでから、実はオオサカに憧れていた。 オダサクの小説で読む「粋(すい)」そのものである強烈な色彩、いちいち風で…

するり、と

部屋から死人のにおいがする。ロキソニン中毒が現実認識を歪ませて、日常を増長している。優雅で感傷的で下品な営みが何を明らかにするんだろう。夜明けを疑いだす唇。それをもっと見たい。私は、となりで眠っている私の部屋に迷い込んできた黒い猫に小さな…

伝達方法はどんな手段でも

あの子が言うには、カミュがこんなことを言っていたらしい。「とりたててこともない人生の来る日も来る日も、時間がぼくらをいつも同じようにささえている。だが、ぼくらのほうで時間をささえなければならぬときが、いつかかならずやってくる。ぼくらは未来…

髪の毛が長かったから

僕はね、運命や偶然や時間の概念について考えれば考えるほど、物事はやっぱり二面性だけが取りざたされて、多くを見ようとしないと思うんです。 そこだけ失われ続けている。 現実とリアル、そのふたつの言葉に隔たる概念すら違う気がする。日本語なのか英語…

言う事が格言めいてた友達

かぬやんとはいつものファミレスで会った。茅ヶ崎の、国道一号線沿いの、24時間空いているファミレスだ。ドリンクバーと何か頼んでも500円くらいで済むし、駐車場があるから隣町に住んでる私は車ですぐ行く事が出来た。国道一号線は夜中は空いていて、…